第十六話

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        更に数分後、瑞希さんは多少酔いが冷めてきたようで、冷水を一口含んだ。     『まったく…いい加減にして下さい。瑞希さんが暴れると絶対に被害が出るんですから。 今回は片手で済みましたが、毎回このようであったら身が保ちません』     「だって…こうでもしないと睦月君は構ってくれないじゃないですか…… それに、今の睦月君は何だかとてもフェロモンが出てるのよ…?」         俺は虫か?虫なのか?フェロモンなど微塵も出していないわ。 あと、話を聞いてくれ。       「話し方に棘が無くなったし、今まで存在していた絶対的な壁が無くなったように感じたから……無性に襲いたくなりました」   『冷水を顔にぶっかけますよ?それか両目に輪切りにした檸檬擦り付けて良いですか?』     「やんっ、睦月君のドS!」               イラっと来たから俺は葡萄酒の金をカウンターに置いて、八百屋の親父っさんから貰った蜜柑の皮を剥いて瑞希さんの目に汁を掛けといた。   目薬だ、激痛が伴う目薬だ。 もがき苦しめ。         俺は瑞希さんの酒屋を出て、商店街を見回りに行かせた神崎を探しに行った。   酒屋を出た瞬間、店内から啜り泣く声が聞こえてきたが無視した。     暴れた罰だコラ。                   商店街を歩いていると、何やら人だかりが出来ている場所があった。 気になった俺は人を掻き分け、騒ぎの原因となっている物を見る。   同時に凄い苛立ちと、哀れみをその身に感じた俺がいた。       如何にも『The 不良』と言うような輩が神崎をナンパしていた。 神崎は鬱陶しそうな表情をしていたが、不良の方はしつこく言い寄っていた。           馬鹿だねぇ…どうやらあの不良はこの街の者じゃないらしい。 じゃなければこの街でナンパなど絶対にしないはず。     何故なら、この街はマスターが手中に収めているから。 マスターの支配下故に、ナンパなどしたら大変な事に……… だから周りの人だかりも口々に不良を哀れむような台詞を吐いていた。     「あいつ終わったな」 「マスターを知らないのね」 「可哀想に…トラウマになるね、あいつもう外歩けないよ」     お分かりだろうか?    
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