第十六話

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        いきなりナイフを取り出した不良が睦月に切りかかった。 睦月は持っていた扇子を広げ、ナイフと面をぶつけるようにして防御。     同時に甲高い金属音が鳴り響………だから何故普通の扇子がそうなるんだ…!?     とにかく、睦月は不思議な扇子で不良のナイフを防いでいた。 不思議な扇子、これ重要だぞ?         「ちぃっ…何だそいつは!?」   『別に、ただの扇子さ』       むぅ…私もその内容は聞きたかったな……よし、帰ったら聞いてみよう。     しばし鍔迫り合いとなっていたが、不意に睦月が扇子を畳み、ナイフの切っ先を巻き込んだ。 更に、そのまま手首を捻ると簡単に不良の手からナイフが弾き飛ぶ。   不良の目線が宙を舞うナイフに向かう。その直後、不良は後方へ吹き飛んでいた。         『軽く気道を潰させてもらった。しばらく呼吸するのに痛みを伴うだろうが……自業自得だと思え』       なる程、折り畳んだ扇子の先で不良の喉を突いたのか。 私も目線がナイフに向かっていたから睦月の動きを見ていなかった……不覚。     睦月は懐に扇子をしまうと、周りにいた人々から拍手と褒める言葉が飛び交った。          睦月は周りの人々に一礼し、私から荷物を半分持って手を取って歩き出した。 当然、私も睦月の後に着いていく事になる。       『悪い気にさせたな、すまなかった』   「いや、格好良かったぞ?惚れ直した、流石だよ」       その証拠にほら、少々胸の鼓動が速くなっている。睦月と手を握っているからか…?   私は気恥ずかしながらも睦月の手と私の手を絡ませ、恋人繋ぎと言うような繋ぎ方にしてみた。     指の一本一本が睦月の指と触れ合い、もう少し近付きたいと言う欲求まで出てきてしまう……         「睦月…腕を抱いても…良いか…?」       睦月からの返答は無かった。 断られたかと思ったが、睦月は手を離して腕を出してきた。   睦月の目線は外れていたが、若干顔が赤くなっていたのを見たら、私は凄く睦月が愛おしく感じた。     恐る恐る腕に手を伸ばし、私は睦月の腕に抱き付いた。   ……いけない、私まで恥ずかしくなってきた……        
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