第十七話

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        あれからようやく涙を止めた私達は、重たい雰囲気のままそれぞれ帰宅した。   雅は飛鳥に一日泊まって話すことがあるらしく、飛鳥を連れて雅は自宅へと帰ってしまった。     一方、私と睦月も自宅へと戻り、リビングにて向かい合いながら座っている。 睦月は私と自分に温かいお茶を淹れ、どこか虚空を見つめている感じだ。         『……俺に、愛情と言う感情を思い出させてくれ。 記憶喪失のままだったら、そのまま愛情を感じていたのかもな』       何も言葉を返せなかった。 否、返すべき言葉が見つからなかった…… ただ分かるのは、今睦月の瞳を見たら涙が再び溢れてしまう事だろう。       『なぁ神崎、どうやって人間は愛情を感じるんだろうな? 互いに会話していれば感じるんだろうか…? 互いに触れ合っていれば感じるんだろうか……? 互いに肌を重ねれば感じるんだろうか…? 俺には分からない』     「私にも分からない……けど、誰かがいて心が休まる時や、その人しか考えられなかったりした時なのかな…?」       『なら、俺は永遠に愛情は感じられないだろうな』           それ程までにも、睦月の中には『明日原 吹雪』と言う人物が強く残っているのか…… だから、私達が初めて出会った時に起こした睦月の行動があれだったのか……    
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