第十七話

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        異常事態、緊急事態が発生した。完全に想定外のトラブルだ。 どうやら神崎は間違って酒を飲んだらしい。   何故、高校生の家に酒があるかと言うと、時折マスターが俺に譲ってくれる時がある。 一応俺も好奇心はあるから酒は貰うが、あまり飲んだ事がない。     だが、その酒を神崎は何かの拍子に飲んでしまったようだ。 恐らく清涼飲料水と間違えたのだろう……厄介な事になった。   人間、酔っ払うとどのような性格になるのか分からない。 神崎は泣き上戸なのか、怒り上戸なのか、楽天的になるのか……参った…どう対処しよう。         『お前はここで、部屋から出ないで待っていろ。水を持ってきてやるから』   「……うん、ありがとー」       案外普通の返事だ。これならそう問題は起きないだろう。               俺は部屋から急いで出て、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、再び部屋に戻ってきた。     しかし、先程の場所には神崎は居なくなっており、代わりにベッドの布団が膨らみを帯びていた。   どうやら神崎は布団に潜り込んだらしい………コノヤロウ。         『ほら神崎、水を持ってきたから少し飲め。多少酔いが覚めるかもしれないから』   「うん…あったかい」       人の話を聞かんか。誰も暖かいか、などは聞いてはいないぞ。   布団を強制的に剥がしてみると、神崎が布団にしがみついてきた。 布団は上に上がっているから、自然と神崎も上半身を起こしている体制になる。     俺はそのまま布団を下に下ろし、神崎の腕だけを下げて上半身を起こしたままにして水の入ったペットボトルを神崎に渡した。       「……んきゅ…んきゅ…」       一体どのような飲み方をしたらそんな音が出るのか知りたいが、それは酒のせいだと決め付けよう。 じゃないと身が保たん。     神崎は水を五分の一程度飲み、ペットボトルの蓋を閉めた。       「睦月、暑い、あっつい」   『よし、自分の部屋に帰れ。説教は明日してやるから帰れ』     「…嫌だ…睦月が居なくなっちゃうから嫌だ………あと、あっつい」           ここで、このタイミングでそれを言うか?それに暑くはない、むしろ適温すぎる位だ。   だから布団を弾くな。 俺の布団だ馬鹿者め。      
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