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時は遥かに流れ、桜華祭当日になった。桜華高校は街の住民が次々と入ってきたりして盛り上がりを見せている。
やはり、多くの出し物の完成度が高いからであろう。
ある所はお化け屋敷。
またある所は演劇。
更には料理屋。
他にも沢山の出し物が出ているため、飽きられずに楽しめる。
俺達の出し物は『逆、メイド&執事喫茶』であり、かなりの人気があった。
流石に通常の喫茶とは正反対の役割で珍しいのか、次から次へと客足が遠退かない。
俺は屈辱ながらもメイド服に着替え、茶色の髪色で腰まで伸ばしたカツラを付け、伊達眼鏡を付けてカチューシャまでも………泣きたくなった。
最初に着替えて皆に見せた時、あろうことか女に間違えられてしまったさ。
俺はそんなに女顔でもないし、雰囲気だって違うだろうに。
大体、カツラまで何故付ける必要性があるんだ…?
だが、このカツラのおかげで俺だとバレないでいるのがせめてもの救いだった。
また一人、客が来たようだ。
俺は客の前に行き、いらっしゃいませ、と挨拶を交わしてからテーブルに着かせた。
やはりこの客も俺が誰だか分からないようで、この教室の女子生徒だと思っている。
憂鬱だ、情けなくて涙が出そうだぜよ。
そう言えば、この教室の担任の桐生はどこに行ったのだろうか?
彼女は現場監督であり、指導者であったはず……逃げたか?
「こら、私が逃げるはずが無いだろ…?それより、何故君は女子なのにメイド服を着ているんだ?女子は執事服を着るのが決まりだったんじゃないか?」
『えぇ、何故か私だけ特別らしくって…でも、その分頑張るので許してくれませんか…?』
吐き気がする位気持ち悪い台詞と声色だ……死にたくなるほど。
だが、唐突に姿を現した桐生にとって、女子は己の味方らしく、少々たじろいでから了承の声を上げる。
あんたもか、あんたも俺の事を女子だと思っているのか。
………もうどうでも良い、こうなったら本気で女装を楽しんでやるさ。
俺が正体を明かした時の皆の反応を見て楽しんでやる。
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