第十八話

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        どうやらまた、新たに客がやってきたようだ。入り口に見慣れた二人組の女子が立っていた。   まぁ…見慣れた女子と言ったら神崎と門宮か、柊位なのだが。 この場合だと、柊は裏方で働いているから神崎と門宮になる。       『いらっしゃいませ、こちらにどうぞ』   「うん、ありがとう」   「………はーい」         ふむ、どうやら門宮のあの間は、俺の事が分かったようだ。 神崎は気付かなかったようで、ごく普通に勧められたテーブルに門宮と座っていた。   門宮はようやく整理が着いたようで、手をポンッと叩いてから俺の方を見てきた。   俺は片目を閉じ、人差し指をそっと俺の口先に添えた。 これだけで門宮は了承してくれたようで、笑顔を見せてくれた。 ……眩しかったのは秘密。               せっせと働いて、ようやく俺も休憩できる時間が来た。   きちんと働いた時間でしばらくの間休憩する事が出来るのが、気を使ってくれている証拠。 それが多少嬉しかったり。       柊も休憩時間のようで、女装した俺の方へとパタパタと足音を立てて駆け寄ってきた。 どうせだから、柊と桜華祭の出し物を回ることにしよう。   勿論、この後も俺は仕事があるために女装を解けない。 ……正直着替えたいが、そうしてしまうと皆に迷惑が掛かってしまうため、仕方がない。         「…むつきとでーと…!」   『はいはい、行きましょう柊さん?』       女装をしているから、口調はやはり女子だ。柊も何やら違和感があるのか、首を傾げながら手を繋いできた。   今現在人が多い桜華高校では、はぐれる可能性があるために、手は繋いでおいて損は無いだろう。   どうせ誰も俺が俺だと分からないだろうし、手を繋いだ所で柊とは仲の良い女友達だと思われるから大丈夫だ。       『さぁ、どこに行きましょうか。私は柊さんの好きな所で良いですよ?』   「うみゅ…ちょっとお腹減ったのー……んとんと…焼きそば食べたい…!」     『分かりました、では飲食店へ行きましょう』   「…はぁい…!」             それから俺達は、同学年の教室で行われている出し物が飲食店の所へ向かった。 その出し物の名前は   デレデレ、クーデレ、ツンデレ、ヤンデレ……あなたはどのデレがタイプ?   などと言うあまりにもツッコミ甲斐がある飲食店だった。    
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