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俺達は先輩に礼を言い、教室を出ようとする。柊は先に行かせ、俺だけ出入り口に立ち、振り返る。
「あら、どうかしたのかしら」
『……一つ、言わせてもらうと、俺は出し物のせいで女装をしているだけのしがない男子ですから』
言い残し、俺は先に行かせた柊を追い掛けた。
後ろで驚愕と思われる叫び声が聞こえたのはきっと気のせいだろう。
柊に追い付くとすぐに、柊が手を握ってきた。
「…えへへ…寂しかったの…」
『ごめんなさい。そう言えば、神崎さんと門宮さんの教室はどんな出し物をしているんでしょうかね……行きませんか?』
「…うん…!」
と言うことで、俺達は神崎と門宮が居るであろう教室へと向かうことにした。
門宮は今現在の俺の正体が分かっているだろうから、ある程度話は合わせてくれるだろう。
行く目的は、単なる神崎の反応と対応が見たいからだ。どうせならこの格好のまま神崎に詰め寄ってやろうか。
神崎と門宮の教室はすぐに見つかり、俺達は中に入っていった。
すると何やら揉めているようで、教室内が随分と騒がしかった。
周りにいた人々に聞いた結果、騒ぎの中心はどうも、一人の不良らしき人物が女子生徒にセクハラ行為をしたらしい。
言い争っているのは、不良らしき人物と気の強そうな女子生徒だ。
ここ最近、この街の治安が悪くなってきている。
少々マスターに言う必要があるみたいだな。マスターならば何とかしてくれるだろう。
とにかく俺は、せっかく街の人々が来てくれた中で不快な思いをさせぬ為にも、騒ぎを止めることにした。
柊を待たせ、言い争いを続ける二人の間に俺は割って入る。
『あなた達、この場がどこだか分かっていますか?いきなり出て来てこう言うのも難ですが、恥を知りなさい。
不埒な行いや、悪意があっての行いなどはこの街にとっては禁忌。
行った後の末路は目に見えていますよ…?』
「うるせぇ!てめぇは引っ込んでろ!俺様がして悪いことなんかねぇんだよ!」
………コイツ、殺して良い?
うん、九割位殺す。
自己中心的な奴大嫌い。
ましてや、自分の非を認めないような輩には、再起不能で永遠と病院通いにさせたいくらいだ。
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