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俺は袖から扇子を取り出し、広げてから不良の首に軽く押し付けた。
プツリ――と言う音を立て、不良の首から一筋の血が流れ落ちる。
「なっ…!?」
『このまま首とおさらばしたいですか?したいなら、このまま口論を続けなさい。
したくないなら、早々にこの街から姿を消して、二度とこの地を踏まないで下さい』
最終警告。これが通らぬようならば、俺は本気でこいつを再起不能までにするだろう。
通ったならば、そのまま桜華高校から立ち去らせる。
『失せなさい、ここはあなたのようなうつけ者が来るべきでは無い』
不良は声にならない位もどかしそうな表情を浮かべ二、三歩後退すると、逃げるかのように教室を出て行った。
うん、もう少しで手が出る所だった。
扇子を袖にしまうと、周りの生徒や街の住民達から拍手と礼の声が飛び交った。
更には、神崎や門宮までもがやってきたらしく、俺に近寄ってきた。
「ありがとう、あのような輩には私達も手を焼いていたんだ」
『いえ、皆さんが楽しむこの場でのいざこざは嫌いでしてね……差し出がましかったかもしれませんが、思わず…』
「流石だねっ☆あそこでさっきの人が手を出そうとしたら、私が校外へ投げ出していたよ」
確かに、合気道ならば可能かもしれないが、その場合は問答無用で死に直結するぞコラ。
せめて死の宣告くらいしてやらんか。多少なりとも後悔はするぞ。
門宮は俺の正体を知っているわけだから、難なく話しかけていられるだろう。
少し、神崎をからかってみようか。
『あっ、神崎さんと門宮さんじゃないですか。あなた方はこの学校で有名ですよ?
神崎さんはそのクールな口調と、心優しき人想いと。
門宮さんは誰とでもすぐに打ち解けられる程心が広く、とても良い人だと』
「うっ…そう言われると恥ずかしいな…それに、私はそこまで人が出来ている訳では無いさ」
(くふふふ…!睦月君は人が悪いなぁ……まぁ、普通ならここまで変わったら気が付かないんだけどねっ☆
照れているしーちゃんも可愛いけど、女装した睦月君も可愛いな。
これなら、私も睦月君に惹かれちゃうかもっ…!)
門宮が恐ろしい事を考えていたなんて俺は思ってもいなかった。
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