第十八話

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      取りあえず俺は袖から扇子を取り出し…取り出し……無い!?     「扇子なら預からせてもらった。少しあれは危ないし、何よりも邪魔になるからね。一応ここは防音加工されていて、悪人の叫び声が聞こえないように……」     『………そうかよ、なら好きにしろよ。俺は一切抵抗しないから、お前の好きなように行動しろ。 性行為でも、奴隷にでも、ストレスの吐け口にでも何でもすれば良い』         俺はとても怒りを覚えている。今の神崎は俺が最も嫌いな奴に成り下がっているから。 もう俺は慌てはしない。 だが、代わりに神崎が大嫌いになった。視界にすら入れたくない。   俺は目を瞑り、両手をだらりと投げ出して無抵抗を示す。       「睦月…?」   『さぁどうぞ、あなたのお好きにして下さい。俺は神崎さんの御命令に従います。 足を舐めますか?這い蹲りますか?奴隷にでもして下さい。さぁ、どうぞ』     「おっ…おい睦月…!?」           絶対に見ない、絶対に視界に入れない。俺には神崎が先程騒ぎを起こした不良と重なって見える。   久しぶりに信用できて熱くなってきた物が急激に冷めていく。 色の付いた景色が、白と黒のモノクロに染まっていく。     大嫌い、大嫌い、大嫌い、大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い                         『来ないなら、俺がやりますよ』       白色と黒色で作られた神崎の手を右手で掴み、俺は勢い良く引き寄せた。 左手を神崎の腰に手を回し、固定されている膝上に神崎を乗せて唇を奪う。   その行為には感情は無く、ただ機械が作業をするように行っていく。     神崎は無理矢理俺から唇を離すが、俺が右手を神崎の後頭部に回して再び唇を合わせた。         「んんっ……!?」   『っは…次はどうしますか?確か性行為をするんでしたよね?神崎さんの望むように、俺は従います』         俺は神崎の腰を引き寄せ、極限まで密着させる。 向かい合う顔は、無機質と焦りが交差していた。    
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