第十八話

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        そこで俺は神崎を解放した。 何故なら、もはや俺は神崎の顔が真っ白に染まって見えるから。 そして、神崎とは絶対に目を合わせぬように、瞳を閉じた。     『ほら、どうぞ好きなようにして下さいよ神崎さん』   「何で…敬語なんだ…!今まで違ったじゃないか……」         『俺は、自己中心的な人がこの世で最も大嫌いだからです。そのような人には目線を合わせる事も、話し掛ける事も、関わりをもつ事もしたくは無いからです。 その対象に神崎さんが当てはまったのは……分かっていますよね? 分かっていなくても宜しいですが、一切近寄らないで下さい。 この拷問部屋で折檻するでも良し、関わりを絶つように立ち去るも良し。 早々にご決断下さい』             真っ暗闇に沈む視界。 瞳を閉じているからだが、今の俺には永遠の闇に見える。 その闇に埋もれても、苦しくても、俺は絶対に瞳を開こうとは思わない。       「い…嫌だ…」   『ほら、また自己中心的になっていますよ?いい加減に決めて下さい。 選択肢は二つ。 この部屋を出る。 己の欲望に従う。 さぁ、早く』     「嫌だ…!私は…私は…そんなつもりで言ったわけじゃ…!」         どうだか。 あの時の目は本気だった。 それに、そんなつもりじゃ無いのならば、何故拘束する必要性がある? 何故、防音加工されている拷問部屋に連れてきた?   くだらない嘘は付くな。       『……二度目の幻滅です。仏の顔も三度まで…と言いますが、生憎俺は仏じゃないので。 どうぞ、お帰り下さい。 俺は柊と桜華祭を回るので、あなたは金輪際目の前に現れないで下さい』         それを最後に、神崎は逃げ出すように拷問部屋を出て行った。 同時に白と黒に染まった世界が色を取り戻していく。   俺はまだ解除されぬ下半身の拘束を忌々しく思いながらも、座りながら時間が過ぎるのをただただ待っていた。      
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