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そこで俺は神崎を解放した。
何故なら、もはや俺は神崎の顔が真っ白に染まって見えるから。
そして、神崎とは絶対に目を合わせぬように、瞳を閉じた。
『ほら、どうぞ好きなようにして下さいよ神崎さん』
「何で…敬語なんだ…!今まで違ったじゃないか……」
『俺は、自己中心的な人がこの世で最も大嫌いだからです。そのような人には目線を合わせる事も、話し掛ける事も、関わりをもつ事もしたくは無いからです。
その対象に神崎さんが当てはまったのは……分かっていますよね?
分かっていなくても宜しいですが、一切近寄らないで下さい。
この拷問部屋で折檻するでも良し、関わりを絶つように立ち去るも良し。
早々にご決断下さい』
真っ暗闇に沈む視界。
瞳を閉じているからだが、今の俺には永遠の闇に見える。
その闇に埋もれても、苦しくても、俺は絶対に瞳を開こうとは思わない。
「い…嫌だ…」
『ほら、また自己中心的になっていますよ?いい加減に決めて下さい。
選択肢は二つ。
この部屋を出る。
己の欲望に従う。
さぁ、早く』
「嫌だ…!私は…私は…そんなつもりで言ったわけじゃ…!」
どうだか。
あの時の目は本気だった。
それに、そんなつもりじゃ無いのならば、何故拘束する必要性がある?
何故、防音加工されている拷問部屋に連れてきた?
くだらない嘘は付くな。
『……二度目の幻滅です。仏の顔も三度まで…と言いますが、生憎俺は仏じゃないので。
どうぞ、お帰り下さい。
俺は柊と桜華祭を回るので、あなたは金輪際目の前に現れないで下さい』
それを最後に、神崎は逃げ出すように拷問部屋を出て行った。
同時に白と黒に染まった世界が色を取り戻していく。
俺はまだ解除されぬ下半身の拘束を忌々しく思いながらも、座りながら時間が過ぎるのをただただ待っていた。
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