第十八話

15/28
前へ
/414ページ
次へ
      喫茶店へ向かう途中、沢山の人に声を掛けられた。軽いノイローゼにでもなる位沢山の人に…… 一人一人に対応していたために、疲労と怠惰で参った。     「あら、あなたはこの街の人じゃないようですね…?」       今、話しかけてきたのは酒屋の店長である瑞希さんだった。 瑞希さんは薄い水色が主となる着物を着て髪を櫛を使って束ねていた。       『初めまして』   「はい、初めまして……と言う冗談は止めて下さいね睦月君?確かに今のあなたは女の子のように見えますが、声色や雰囲気が睦月君に酷似していますよ?」     『……流石ですね瑞希さん。初見で見破ったのは瑞希さんで二人目ですよ』         うーむ…瑞希さんはマスターと同じで嘘が付けないんだった。 変装しても、瑞希さんとマスターは簡単に見破るんだよな……雰囲気で分かるとか凄まじい。   柊は最初から俺が女装している事を知っているが、恐らく柊も見破るだろう。       「しかし睦月君、可愛いですねぇ…お姉さんちょっと興奮してきちゃいました」   『興奮しないで下さいね?』     やんわりと断ると、瑞希さんはとても残念そうな顔をしていた。 顔を赤く染めながら言われると冗談にはとても聞こえないから辞めてもらいたい。       「そうそう睦月君、丁度喫茶店に行く予定だったんですよ。 久しぶりに睦月君が淹れたお茶が飲みたくなっちゃってねぇ。 あのお茶を飲むと体が火照っちゃって火照っちゃって……うふふっ」     『熱いお茶なんですから当然体が火照りますよ。あえて卑猥に聞こえるように言わないで下さい。 私も喫茶店に行きますから、一緒に行きましょう』   「…れっつごぉー…なの」         俺達は瑞希さんと一緒に喫茶店へと向かう。着物を着ている瑞希さんは歩行スピードが遅いため、俺と柊は自然と瑞希さんに合わせて歩いていた。     「ごめんなさいねぇ…?私、着物ではあまり速くは歩けないの」   『いえ、マイペースに行きましょう。速く行って事故にでも遭ったら大変ですもの。 特に、瑞希さんは美人なのですし、これから大切な出会いがあるはずですから』         どっかの誰かには言わなかったその言葉。………さて、誰にだろうかな。      
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加