第十八話

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      「ふふっ、睦月君は狙って言ってるんですか?そんなに恥ずかしくなるような台詞、久しぶりに耳にしましたよ?」   『いえ、真実ですから』   「びじんさんなのー」       柊も瑞希さんのやんわりとした独特の雰囲気に呑まれたのか…はたまた、互いに同じように他人の雰囲気を読み取れるからか、自然と溶け込めていた。   そう言えばもうすっかり慣れて今までずっと忘れていたが、片目に巻く包帯はそろそろ取れそうだ。     今思えば、桜華祭で片目に包帯を巻いた女(女装した俺)が居て何の支障が無いとは……ある意味で、皆凄いかもしれないな。   喫茶店に着いたら包帯を外すとしようか。                                   無事、喫茶店に辿り着いた。 最初に俺が入り、マスターと出会ったが……マスターは目線を合わせずに俺だと即答した。 流石、としか言いようが無かった。       「おや、瑞希さんじゃないですか?あなたがここに来るのは久しぶりですね」   「マスター、久しぶりですねぇ。今日は睦月君のお茶が飲みたくなっちゃって来たんですよ…?」     『只今、お持ち致します』           マスターと瑞希さんは久しぶりに出会ったからか、積もる話もあるようで楽しげに会話をしていた。   俺はすぐに瑞希さんとマスター、柊に渡す飲み物を出すために、取りあえず女装を解く前に準備を始める。     先に瑞希さんと柊に出すお茶と珈琲を手早く淹れ、先に二人の下へと持っていった。   瑞希さんはマスターとの会話を一度中断してお茶を受け取る。 柊も同じく珈琲を受け取り、疑問符を頭に浮かべながら此方を見てきた。理由は珈琲だろう。       『柊さんには、いつでも珈琲を淹れても良いのです。私の大切な味方なんですもの』   「えへへ…ありがと…」     「おや?睦月君がそんな事を言うとは、何か起きる前触れですかね?」   『それよりマスター、最近この街で嫌な事が多発しています。このままだと被害は恐らく多くなるかと』           マスターは手を口に当て、ふむ…と考え込む。 その間に俺はマスターへの紅茶を淹れ、マスターの居るカウンターへ置いた。    
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