第十八話

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        睦月と瑞希…二人がそんな事をしているとはつゆ知らず、喫茶店ではマスターが動き出していた。   その理由は、最近のこの街における治安の維持である。 柊はマスターの手伝いをするために、マスターの側についていた。     マスターは携帯電話を取り出し、とある番号に電話を掛けた。       「もしもし、私です。最近の街の状況が目に余る光景なので、近々アレを行うから準備して下さい。 報酬は睦月君の珈琲、紅茶、緑茶の三種類で」       相手は居ないのにマスターは指で三を表し、ニコニコと笑顔を見せる。 柊はマスターに頼まれ、睦月の見よう見真似で珈琲を淹れていた。 しかし、身長と経験が足りないから悪戦苦闘していたのは秘密だ。       柊がようやく珈琲をマスターに届けると同時にマスターは携帯電話を閉じ、目を閉じて溜め息を吐き出した。   そして目を開くと、先程の目付きとはかけ離れ、柊がマスターの瞳に恐怖を覚える程だった。         「――おや、柊さんありがとうございます」   (…何…今の……怖い…)     「すいませんねぇ…二十年位昔の相方に連絡していて、ついつい昔の感覚になってしまったんですよ」       今のマスターの容姿は誰が見ても二十歳後半だろう。昔と言っても、容姿と言動が合っていない。   ならば一体マスターは何歳なのだろうか……マスターは昔、名のある情報屋をしていたと言っていたが、どんな程度だったのか……       「余計な詮索はしないで下さいよ…?いくら睦月君の知人とは言え、深く追求するようならば……」   「…しっ…しない…!」         マスターの脅しとも言えるその言葉に柊は畏怖し、首を横に強く振って約束を交わした。   マスターはニコリと笑顔を柊に見せ、珈琲を受け取った。 一口珈琲を含み、味わうようにして飲み込む。       「……うん、まだまだ荒いですが、初めてにしては上出来です」   「…やったぁ…」       柊が小さくガッツポーズをしているのを見て、マスターは優しく微笑んだ。   再び携帯電話から着信音が鳴ると、マスターは電話に出た。    
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