第十八話

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      未だに距離を取る柊に、独り言を言うように祐介は呟き始めた。     「昔々、ある所に二人の男の子と女の子がいました」   「………?」       突如として語りかけてきた祐介に疑問を抱き、柊は首を傾げるが、祐介は言葉を紡ぐのを止めようとはしなかった。   むしろ、懐かしむように、哀しむようにしてそれを口に出していた。       「男の子は女の子が好きでした。また、女の子も男の子が好きでした。 二人は小さな時からずっと一緒で、これからも永遠と一緒だと思っていました……そう、思 っ て い ま し た 。 運命とは残酷、神とは非情であり…男の子は女の子と永遠に離れ離れになってしまいました。 …男の子は会いに行こうと努力しても、忘れようと努力しても、どんなに嫌な事が自らの身に降りかかっても……決して女の子に会えず、忘れられず、記憶の九割が女の子で埋め尽くされていました」         そこで祐介は一息入れ、柊は瞳に涙を溜めて祐介の話を聞き入っていた。       「…だから、男の子は変わってしまいました。 女の子と一緒にいた時には自然に溢れた笑顔も、愛情も全て封印して、人と接するのに壁を張りました。 万物を拒絶し、己の殻に閉じこもり、離れ離れになってしまった女の子の事ばかり考えていました。 ……ある日、男の子は己の殻をとある二人に粉々に打ち砕かれてしまいました。 その二人は男の子に何度拒絶されてもめげることはなく、たとえ涙を流しても男の子に接していきました」           祐介は喫茶店の入り口を見る。その行為には何の意味があったのか……分からない。         「その男の子は最終的に、二人の女の子を受け入れました。 ですが、男の子は今まで人との関わりを持とうとはしていなかったので、どうしても二人の女の子には素直にはなれません。 だから、いつも男の子は悲しませてしまい、後悔をしてしまいます……その辛さは身を引き裂かれるよりも痛く、地獄に落とされるよりも酷く………何度自殺しようと考えたか…」     「…自殺…!?」     「このお話に続きはありません……未だに、今この場所で男の子は止まっているから……おしまい」             長い長い昔話が終わり、祐介はツゥ…と一筋の涙を流した。 自らの話に感動したとかではなく、ただ反射的に涙が流れ出ていたのだ。    
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