第十八話

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        とある場所に、二人の女性がいた。一人は腰まで伸ばした黒い髪を一つに束ね、伊達眼鏡を掛けている。 もう一人は前髪がぴょこん、と跳ねていて、常に笑顔を絶やさないようだ。       「……なぁ…雅、私は勘違いをしていたのかな…?」   「少なくとも、勘違いをしていると思うよ?確かに睦月君もいけないけど、それを含めた上で睦月君を受け入れてあげなきゃ……同情とかそんなのじゃなく…」       ――門宮 雅は、言いにくそうに手をあちらこちらに動かしながら表現をしていた。 もう一人、神崎 椎名は下唇を軽く噛みながら俯く。   門宮は神崎に背を向け、後ろで手を組みながら再び語り掛けた。         「粉々に砕け散ったピースをはめられるのはたったの二人だけ。 たったの二人だけが、修正して新たにピースをはめられる。 そのピースが何なのか…しーちゃんには分かるかな?」   「……………」     「それが分からないなら、しーちゃんは睦月君を好きになる資格は無いと思うなぁ。 睦月君は人を拒絶してきた分、一度睦月君が人を好きになったら誰よりも愛してくれると思うよ? だけど、そのためにはピースが必要なんだよ、きっと……飛鳥ちゃんはピースをはめられるのかな…?」           諭すように、道標を差し出すように、門宮は神崎に語り続ける。       「恋のライバルとか、それ以前に睦月君を前に向かせるのが第一だよ。 過去に縛られ、後ろを見続ける睦月君を前に向かせ、自分を見てくれるようにするのが一番の条件」     「でも…!」     「でも…なんて言うのは逃げている証拠!逃げるなら、私がしーちゃんを押し退けて無理矢理にでも睦月君を奪うからね!」           今までに無い険悪な表情をする門宮が神崎に怒鳴るように言い寄る。 しかし神崎は俯き、思わず顔を横に背けてしまった。    
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