第十八話

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      顔を背けた神崎に門宮は徐々に目を大きく開いていき、歯を強く噛み締めた。   呆れと怒り、神崎に対する負の思いが湧き上がってきて、手までも強く握り締めていた。     「っ……もう…良い…!睦月君が椎名を嫌った理由がよく分かったよ」       「しーちゃん」ではなく、「椎名」と門宮は言い放った。 これは過去に、初めて門宮と神崎が出会い、友達になった時に決めた約束。   門宮が神崎を呼ぶ時は必ず「しーちゃん」とあだ名で呼ぶと約束を交わした。 その約束が破られた今、門宮と神崎は友達と言う絆を断ち切った事を意味していた。         「…雅…」   「もう、あなたなんか知らない。友達でも無い人に名前で呼ばれたくもないから」       そう言い残し、門宮は神崎から逃げるようにしてその場を去った。   残された神崎はすでに生気の無い瞳をしてふらふらと、街をさまよい歩き始めてしまった。                                   バラバラになってしまった多くの絆。それらは全て元通りに戻るのか…… それとも、もう二度と繋がる事が出来ないのだろうか……     その手綱を握るのは、未だに不可解な発言を残す柳葉 祐介なのか…それとも、神崎 椎名なのか……   それを知るのはもう少し過ぎてからになるだろう――      
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