第十九話

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      喫茶店へ向かう道中、俺は向かい側から猛スピードで走ってくる影を見つけた。 むしろ、俺目掛けて突き進んでくるようだ。       「む つ き く ー ん !」   『ガハァッ!?』       タックルするように飛びついてきたのは、桜華祭で拷問部屋に居た時に喧嘩が勃発した門宮だった。   何故、門宮がここに居るかと言うと、元々この様な計画だ。       俺と門宮、そして祐介の三人がグルになって、神崎と柊の二人をターゲットにある事を実行する計画。     内容はこうだ。 一度俺達全員の関係を全てバラバラに崩し、そこから神崎と柊がどの様にして再び関係を取り戻すのか……と言う物。   あらかじめ祐介は桜華祭の打ち上げと言う事で別れ、門宮の誘導によって神崎が俺を拷問部屋へと連れ、捕縛した所で俺が神崎にキレる。     その小さな亀裂を無理矢理大きくして、関係を断ち切る。   その修復方法を…俺がどうしても見たかった。         柊には、これはかなり意味の無い物だったらしく、門宮を叩いただけで終わったが……神崎は計画通りに行ってくれたようだな。       『門宮…悪かったな。わざと神崎と喧嘩させた上に、柊に叩かれたりして……痛かったよな…』       柊に叩かれた門宮の頬をそっと手のひらで触れ、罪悪感を感じながら言う。 だが門宮はそんな事は気にしないまま……いや、多少は気にしながらも首を横に振ってくれた。       「うーん、飛鳥ちゃんに叩かれたのは予想外で腰を抜かしちゃったけど、後は完璧さ☆ でも、やっぱりしーちゃんを騙したのは胸がチクッとしたなぁ……」     『本当にすまないと思っている。だが、俺も俺で心理的な追い込みがあってな。 これが終わって皆元通りになったならば、俺はもう覚悟が出来ただろう。 だから、きちんと二人に向き合うし、二人を心の底から愛情が向けられると思うから……』     「分かってるよ。 ………でも、しーちゃんとの対話時に、私は本当にしーちゃんの対応にカチンと来たんだ。 私はあんなに覇気のないしーちゃんは初めて見たし、何よりも睦月君に二人を愛してほしかったんだよ…?」           だからこそ、この計画を立てたんだ。   全ての整理を付けるために……    
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