第十九話

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        俺達はそのまま一緒に喫茶店へと向かうことにした。 その間、門宮は神崎に対する罪悪感や否定箇所をずっと話してきた。   俺は黙ってその話を聞き入れ、門宮が神崎をどれだけ心を許しているのかが分かった。     もはや二人にとって、互いに必要な存在であり、人生に不可欠だと言うのが心に染み込んできた。   ……本当に、俺の自己中心的な頼みのせいでその絆を崩させてしまったのは悪いと思う……         「…あのさ…もし、しーちゃんが何もしなかったら…?」   『その時は、俺がこの街を出る。偶然神崎と出会う事の無いように、可能性を全て潰してから』       着いて来る者は…柊と祐介位かもしれないな。 何だかんだ言って、柊は無理矢理にでも俺に着いて来て、祐介も同じように無理矢理にでも来るだろう。   出来るなら、俺は一人で行きたいものだがな……       「じゃあ…さ…私も一緒に行ったら迷惑かな?しーちゃんに会っても気まずくなるし、睦月君に着いていきたいな…なんて」     『断る。お前には家族が居るだろ?俺は身内は誰もいないし、周りは皆偽りの仮面に騙されているだけだ』       そう、偽りの仮面に皆騙されているだけ……本当の俺を理解してくれる奴はもう、一人もいない。     神崎ならば、柊ならば…と思ってしまうが、自己中心的な性格を作る俺の小さな心の器がそれを拒絶してしまう。   自己中心的な者は嫌い……矛盾しているが、それは俺自身が弱いから…情けないから矛盾してしまう。         「…そう…だよね…ごめんね?私も少し浅はかな考えだったよ」   『別に、謝る必要は無い。全て俺が悪役、誰も悪くはない。 だから、傷口を舐め合うような事はしないし、広げることもしない』     「辛くは…ないの?」   『確かに多少は辛い。だが、そんな物はとうの昔に起こした出来事の方が遥かに辛いさ』           未だ、吹っ切れてはいない心の断片に存在し続ける人影。 いっそのこともう一度記憶喪失になって二度と記憶を取り戻さなければ良いのにな……   そうすれば、こんな事をしなくても良かったのに……    
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