第十九話

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        ――俺達が喫茶店へと戻った時、桐生は門宮の隣へ行き、祐介はウェイター服を着て椅子に座っている。 マスターは未だに帰ってきていない様子で、柊は勢い良く抱きついてきた。   まだ、肝心の神崎は来ていないようで、しばらくの間柊と戯れていることにしよう。       「むつきぃ…えへへ」   『どうした?』     俺と柊だけでスタッフルームに入り、俺が椅子に座っている膝上に向かい合うように柊がまた座る。   柊は嬉しそうな表情をしながら俺の背に手を回し、見上げるようにして呼んできた。       「…大好き…一番大好き…! いっぱいきすしたいし…いっぱい一緒にいたいのー」   『………するか?』       俺は柊の頬に手を添え、柊の瞳を見ながら問い掛けた。 今更、柊のその希望を断る必要も無いし、別にキス位いくらでもしてやるさ。   だが、柊は予想外だったのか…目を丸くしてジッと見返してきた。 次第に頬に熱が帯びてきて、顔が赤く紅潮してきている。       「…えっ…えぇ…?」   『目、閉じろ』     混乱している中、言われるがままに柊は目を閉じる。 しかし、今からキスをされると思ってか、多少体が強張っていた。   俺はそんな柊の背中に手を回し、ゆっくりと唇を合わせた。 唇が触れた瞬間に柊から声が漏れ、緊張が解れてきたようだ。     一度、唇を離すと、柊は目を開けてポーッと虚空を見つめていた。         『……柔らかかったぞ』   「えへへ…もっかい…」       今度は柊から唇を合わせてきて、口を開いてくる。どうやら深い方を所望のようだ。   俺も口を開くと、柊から恐る恐る舌が送られてきて、俺も舌先で柊の舌に触れる。 ビクリとして一瞬舌が戻ったが、次には奥まで舌が入ってきた。         「…ん…ふ…ぁっ!」       互いに抱き締める力が強まり、しばらく深いキスを繰り返していた俺達だった。    
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