第十九話

12/32
前へ
/414ページ
次へ
      『……そうか、喫茶店に来る前に瑞希さんの酒屋で色々あったからな』   「…嘘…!そんなの嘘…!」       柊は頬を摘んできた。 軽くだが、若干小さな手で確実に摘んでいる。俺も柊の頬を摘み、否定するかの如く引っ張った。   想像以上に柊の頬は柔らかく、ぬいぐるみを触っているような感触だった。       「えぅ…うひょだ…!」   『……嘘じゃないさ』       案外頬を摘まれていても喋れる俺だった。反対に柊は上手く喋れないようで、何を話しているのかさっぱり。   一応、今のだけは聞き取れたが……あまり続けるのは得では無さそうだな。 取りあえず柊の頬から手を離した。       「じゃあ…私がむつきと…えっちしたいって言ったら…むつきは何も感じないの…?」   『柊がしたいならば、喜んで性行為をしよう。今はアレだが、望むなら帰ってから営むのか?』     デレデレ状態の瑞希さんに襲われてから、性行為になんの抵抗も無くなった。 俺もそう簡単に行うわけでもないが、柊ならば瑞希さんと同じように性行為をするさ。       『俺はどこかの漫画やゲームみたいにズキッと胸は痛まない。 胸が痛む理由と、必要が無いからだ。未練は既に断ち切れている……ただ前だけを見ながら生き続ける』   「…そっか…」             そう伝えた途端、喫茶店の入り口が開いた音がした。 どうやらようやく主役が来たようであり、俺と柊もスタッフルームを出て行く。    
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加