第十九話

15/32
前へ
/414ページ
次へ
      柊はピョコンと椅子から降りると、神崎の目の前に躍り出た。 そして先程俺にやったように、神崎の頬を抓った。     「人の代わりはいないの…一度失ったピースは二度と元には戻せない……しいなにはしいなのピースがあるのー」   「わらひの…ぴーひゅ?」       一体何の話をしているのだろうか…?ピースが何だと? もしやまた祐介の馬鹿が訳の分からない入れ知恵でもしたのだろうか。   ……今頃くしゃみをしていそうだな…単純で期待を裏切ってくれないような人間だから…彼奴は。     ふと、焦点を二人に合わせると、柊が神崎の反対の頬まで抓っていた。 両手を伸ばしきって頬を広げているため、神崎は柊の顔を凝視している形になっている。         「しいな…見つめちゃ…やぁ」         シリアスを続けていた今、そこでボケるとはなかなか勇気のある行動だと思う。だが空気を読め、自分でまいた種だろうが。       「じょーだん……でも、しいなが少し勇気を出せば絶対に大丈夫…なの……私も謝るの…」     拷問部屋で捕らわれた俺を見た時に門宮を叩いたからか、柊は若干気を落としながら呟いた。 ……参った、俺完全に空気。        
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加