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柊が神崎の頬から手を離し、続いて空気と化していた俺の前にやって来る。
まぁ、来た理由は何となく分かるが……生憎、それは神崎一人で成し遂げてもらわないと今までの経過が全て意味を無くしてしまう。
無理矢理にでも柊を説得し、神崎から引き剥がすしか無さそうだ。
ある程度理由を話すか…それとも、条件を付けて契約を交わすか……取りあえず、前者は絶対にしない。
『……神崎と門宮の件について、俺と柊は一切手を貸さない。己の力だけで門宮との仲を取り戻してみろ。
本当に神崎に罪悪があるならば、自分で活路を見出してほしい』
「……え…?手伝ったらダメ…なの…?」
予想外の言葉だったのか、柊は目を丸くして驚いていた。
神崎は想定出来ていたらしく、あまり表情に変化は見られなかった。
だが、これで全てが決まる。これで自己満足な望みが全て解決する。
失った胸の高まりが、再び蘇るかもしれない。
……俺は立ち上がり、神崎と柊を喫茶店から出るように誘導し、入り口付近で二人に伝える。
『俺は今から一週間、高校を休む。お前等は俺の家に帰っててくれ。
くれぐれも神崎は誰からも力を借りることの無いようにしろ……これは俺と神崎の仲を戻す条件にしておこう。誰かに聞く、というのは簡単に俺の耳に入ってくるからな』
「…やっ…!私もむつきと居たい…!」
『駄目だ。ここからは俺も一人でやらないといけない領域だから、連れていく事はできない』
明日から俺は、吹雪の母親の所に赴くからだ。それだけは俺一人で果たさねばならぬ問題だから……
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