第十九話

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    ……さて、神流 睦月だ。   何だかんだ喫茶店であった後、俺は大分前に貰った吹雪の母――静香さんの連絡先を取り出し、携帯でそこに掛けた。 夜遅かったが、すぐに静香さんは電話に出てくれた。   そして今現在静香さんが住む家の住所と場所を教えられて、そこへ向かっている最中。       ……まず第一に、俺は静香さんに謝らなければならない。 吹雪が亡くなった後、静香さんが話掛けて来てくれたが…俺はそれを拒絶して逃げるように消息を絶ったからな。   今回はそのけじめを付けるためと、今後についての話をしようと思う。                   しばらく歩いていると、静香さんから受けた連絡先、住所、家の風景とが一致する家の前に到着した。 普通の一軒家で、特に変わったような家では無さそうだ。     俺は静香さんの家のインターフォンを押し、少しの間待っている。 扉が開き、中から前髪がピョンと跳ね、肩甲骨辺りまでストレートに伸びた綺麗な黒髪、童顔……とでも言う若々しい顔をした女性が出てきた。   その女性こそが、吹雪の母である静香さんなのだった。       「睦月君、入ってね?」   『失礼します』       静香さんに促されて入室する。 静香さんは俺より少し身長が低く、吹雪と同じ位の大きさしか無かった。 加えて童顔であの美貌……瑞希さんと言い、静香さんと言い、この街の女性は実年齢と容姿が矛盾している気がする。   そう言えばマスターもそうだ。 マスター、瑞希さん、静香さんの三人は本当に年を取っているのかが疑問に思ってしまう。     もしかしたらこの三人の周りの時間だけ止まっているのかもしれないな……    
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