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とにかく、俺は静香さんに促されてリビングにやって来た。
静香さんはソファーに座り、俺にも座るよう言ってきたが、俺は静香さんの前の床に両膝をついて正座をする。
「睦月君…?」
『…今まですいませんでした』
俺は両手を着き、床に擦り付けるように頭を下げた。
土下座…と言う謝罪。
無論、そんな事だけで許されるような軽いモノであるはずがない。
まず、そんな事で俺が許さない。許されるとは思わない。俺の生涯を全てを捨ててでも、償えるものじゃ無い。
だから、今の俺なんかに静香さんの顔を正面から見る資格もない。
……そう思っていた。
「顔、上げてよ。きちんと私を見てよ……目を見てくれないと…許せないじゃない……」
『――え?』
静香さんのその言葉に、思わず顔を上げてしまった。
静香さんは瞳に涙を浮かばせ、声を震わせながら…絞り出すかのように……
瞬間、心臓を強く鷲掴みされたような、胸に強い痛みを感じた。
「そんなに…さ……先にやられたら私が言い出すきっかけ無くなっちゃうじゃない…」
『………』
何故、何故、何故、何故!?
許す…!?許される!?
俺を哀れに思ったから?
「私は、吹雪は睦月君を愛している、って知ってる。睦月君も、吹雪を愛している、って知ってる。
だからこそ、睦月君は深い自己嫌悪に陥っているんだと思う。
…でもね?吹雪は睦月君自身が傷ついたりするのは嫌だったんだよ。
睦月君が吹雪が傷つくのを恐れるよりもずっと強く、嫌だったんだ」
黙って……否、一言も口に出来ない程の雰囲気を醸し出していた。
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