第二十一話

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      やぁ久しぶり、神崎 椎名だ。   睦月が私にある言葉を伝えてから既に一ヶ月が経過した。 ただ今私と飛鳥は睦月と一緒に家で大変な事態に陥っている。     数日前に私がマスターから貰った一瓶の酒を、睦月が水と間違えて大量に摂取したところ、睦月が完全に酔い潰れてしまった。   睦月は前に『自分は瑞希さんから散々酒を飲まされたから酒には若干強い』と言っていた。 その睦月が酔い潰れたと言うことは、アルコール度数が相当高いと言うのに繋がる。         「うみゅぅ…むつき大丈夫…?お酒飲んで良いの…?」   『んー、らいじょうぶさ』       明らかに駄目なのが分かる。 私も何度か酒を飲んだから少しだけこの言葉が現状と合っていないのが身に染みている。       『神崎、柊、お前達は可愛いな』       刹那、顔に血が登っていくのが感じられた。今私は絶対に赤面をしているだろう。 睦月のいきなりのカミングアウトに虚を突かれ、顔をグイッと近付けられて……唇が付きそうな位置で言われた。     「なっ…ぅ……むっ!?」       酒臭い、それも相当の匂いだ。口の中、鼻孔に広がる酒の匂いと味。 私は酔った睦月にそのまま口付けをされた。逃げられぬように首を固定され、丁寧に舌まで送り込まれてきた。     ………睦月がこうして積極的に私に迫って来るのは初めて……そんな邪な思いが頭をよぎった時は既に私にまで酒の影響がやって来た。     私と飛鳥は酒に極端に弱い。 一杯の酒を口に含んだだけで、簡単に酔いが回ってしまう。 今みたいな状況に陥ると、酔いは更に強く、そして早く回る。       「あー…!」       飛鳥が何か声を上げて叫んでいるが、酔いが回ってきた私にはもうただの雑音にしか聞こえなかった。   酔いと勢いに任せ、私と睦月は口付けを続ける。 酸素が途中足りなくなっても、その一瞬だけ唇を離して呼吸すると再び唇を合わせ続けた。       「…っふ…んくぅ……」       ……ゾクッと、背筋に寒気が走る。まともに体は動かせず、思考が何とか正常な今が幸いだ。 連鎖的に全身に甘い痺れが生じ始め、酔いがそれを増幅していく。   ………恐怖は無。私は睦月のあの返事を聞いて、睦月と飛鳥と共に人生を過ごす事を決めたから。      
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