シャボン玉

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 シャボン玉に乗ったのは生まれて初めてのファンタジだった。  それを吹いた。  いつのまにか、シャボン玉に乗りこみ、浮いた。    シャボン玉を吹いて、小人になり、それはそっと壊れないように乗り込み、宙に浮く…それは大変なことだけれど。  ある晴れた昼下がりの校庭に、無心で慎重に、体をこわばらせ、シャボン玉を吹いた。  古い木造校舎の壁は、キャンバスになり、小さなシャボンの連なりが、大きく膨れていく。    凝視していく、追いかけると、シャボン玉はさらに大きく浮かびあがる。  クラスメイトも乗る、シャボン玉も、飛行した。  浮くと、繊細で柔らかな気分だった。  わたあめが、唇に溶ける瞬間には、ふわっとなる感触で、静かに、自在に、後ろの友達に、振り返ったり、身体は動かせず、気を遣ったけれど、心はとてもはしゃいだのを、見守っていた。    それは、記憶の中で、シンプルに刹那く、華奢で優しい時間として、想い起こした。    初のファンタジは、クラスメイトと、シャボンに浮かび、優しいひとときに過ごすことを想った。
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