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女の言葉は続かなかった。
知らない以上、もう話を聞く意味がない。
女の首に突きつけた大剣をけたたましく鳴らし、刻む。
「ガッ、アグッ、ウアアァァ!?」
苦悶の声を女が漏らす。
ためらいもなく、一閃。
刃は無慈悲に女の体を蹂躙し、女はゆっくりと倒れ、動かなくなった。
「……使えねぇな」
吐き捨て、ハセヲは“ゲート”を開いて荒野を後にした。
*****
――その様子を一部始終を見ていた者がいた。
PKを見下ろしていたハセヲよりも遥か高い位置で、その女は全てを見ていた。
遥か高い天に立ち、眼下の光景を眼に焼き付けるかのように。
「審判日は、もうすぐそこまで来ている……」
透明で、鈴のように澄んだ声が『世界』響く。
「もう――待てない」
風になびく髪はどこまでも紅く、どこまでも美しい。
「悪いわね……無理矢理だけど、そろそろ起きてもらうわ」
愁いを帯びた瞳は、それでいて強い意思を秘めていた。
「願わくば『世界』にとって……アナタにとって」
その女性は、何かに焦がれるような……何かを想い帰すような表情を浮かべ――
「行き着く答えが誇れるものであらんことを――」
未だ見ぬ何かへと、祈りを捧げた。
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