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ゲートを介し、ハセヲは都へと帰還する。
転送された街の名は『マク・アヌ』。
焼き払われた“最初の世界”で数少なく残った名残の一つであり、至るとこに水が流れ、町並みを彩る始まりの街。
一つ目の『世界』の住人であった人間には『水の都』とも呼ばれる、美しい街だった。
(さて……とりあえず、アイテム補充しとくか)
カオスゲートの安置されている神殿を出て、長い石畳の橋を渡る。
橋から眺めることの出来る夕焼けは、この『世界』でも有数の美とされ、橋の所々でPC達が話し込んでいる。
その何人かが視線をこちらに向ける。
PKKとしてそれなりに名を売っているハセヲだ、もうこの視線にも慣れた。
幾人から向けられる視線を全て無視し、歩みを進めると……
「……なるほど。死臭の漂うようなキャラだな。『死の恐怖』――PKKのハセヲ君?」
一人の男が、すれ違い様に声をかけてきた。
「………」
歩みを止め、声の主へチラリと視線を向ける。
声をかけてきたのは緑の長髪を束ねた、どこか和をイメージさせる風貌のPCだった。
その仕草には、妙に芝居がかっていた。
「PCをキルするPC、即ちPKが横行する昨今の『The World』は確に嘆かわしい。しかし、それを力でねじ伏せるキミ達PKKのやり方に、理があるだろうか!?」
「『月の樹』?」
聞きなれない名を頭の中で反芻する。
榊に背中を向けたまま、視線だけを向けて言う。
「なんだそれ?ギルドの名前か?」
―――ギルド。
『The World』における、PCによる集団、組織、組合を指す。
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