第1章 死の恐怖『ハセヲ』

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***** ゲートを介し、ハセヲは都へと帰還する。 転送された街の名は『マク・アヌ』。 焼き払われた“最初の世界”で数少なく残った名残の一つであり、至るとこに水が流れ、町並みを彩る始まりの街。 一つ目の『世界』の住人であった人間には『水の都』とも呼ばれる、美しい街だった。 (さて……とりあえず、アイテム補充しとくか) カオスゲートの安置されている神殿を出て、長い石畳の橋を渡る。 橋から眺めることの出来る夕焼けは、この『世界』でも有数の美とされ、橋の所々でPC達が話し込んでいる。 その何人かが視線をこちらに向ける。 PKKとしてそれなりに名を売っているハセヲだ、もうこの視線にも慣れた。 幾人から向けられる視線を全て無視し、歩みを進めると…… 「……なるほど。死臭の漂うようなキャラだな。『死の恐怖』――PKKのハセヲ君?」 一人の男が、すれ違い様に声をかけてきた。 「………」 歩みを止め、声の主へチラリと視線を向ける。 声をかけてきたのは緑の長髪を束ねた、どこか和をイメージさせる風貌のPCだった。 その仕草には、妙に芝居がかっていた。 「PCをキルするPC、即ちPKが横行する昨今の『The World』は確に嘆かわしい。しかし、それを力でねじ伏せるキミ達PKKのやり方に、理があるだろうか!?」 「『月の樹』?」 聞きなれない名を頭の中で反芻する。 榊に背中を向けたまま、視線だけを向けて言う。 「なんだそれ?ギルドの名前か?」 ―――ギルド。 『The World』における、PCによる集団、組織、組合を指す。
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