Junky

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 大学に入って一年。この一年で出来た友達の女の子に、ある日突然告白された。最初は戸惑ったけど、別に付き合ってもいいかな、って思った。ここ二年くらいフリーでちょっと寂しかったってのもあったし。  俺は軽い気持ちで彼女と付き合い始めた。      付き合い始めてからしばらくして、気付いたことがある。彼女が、友達として接していた時には一度もしなかった表情をするんだ。誕生日のサプライズで喜ぶ顔も、急にシフトが入ったせいでデートに行けなくなったことに腹を立ててふくれる顔も、俺にすべてを許して抱かれている時の顔も、すべてが初めて見る表情だった。そしてそのどれもがたまらなく愛くるしい。俺だけにするというその表情がとても眩しくて、俺は彼女の事を本気で好きになってしまった。    最近では、彼女の新しい表情を探すのが俺の楽しみになっている。俺にしか見せない表情を、俺だけに見せる可愛い可愛い彼女の表情を、色んな手を尽くして、引きずり出す。  一つ新しい表情を見つける度に、次の表情を探すための方法を考える。まだ見たことのない表情を見せてれるのなら手段など選ばなかった。          ――付き合い始めてからもう二年になる。  どれくらい彼女の表情を見てきただろう。数え切れない。容量にして160GB。すべて写真に収めてある。  そして未だに俺は彼女の表情探しに没頭している。彼女は実に表情豊かで、全く飽きが来ない。二年間もこんなことをしている俺の部屋には、とても人には見せられないものが溢れかえっていた。すべて新しい表情のために集めたモノだ。  今度はこれを使ってみるか・・・       ――苦痛に歪む顔も素敵だよ。 ――その魂の抜け殻のような笑顔も良いね。 ――何かを訴えかけるような目つきもたまらない。 ――涙で顔を腫らして羞恥の中で眠るその寝顔も実に美しい。     ――さあ、次はどんな表情を見せてくれるんだい?
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