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外は蒼く、澄み渡っていた。
砂利を踏み歩く度に、砂を噛みしめたような感覚な襲われる。
このような道を歩くのは、初めてだ。
昔はあったのかもしれないが
今の僕は、そのような記憶は掻き消されていた。
辺りは日本で言う江戸みたいな所だったが、西洋も合わせ持つ、何とも不思議な町並みだ。
着物を着る者は、舞子だけ。
他は皆、異国の服をまとっていた。
現に、僕もその異国の服とやらに袖を通しているのは確かだが…。
この国の技術は発達していないのか、まだ自転車すら走ってなかった。
交通手段は、金を払い人力車に乗るか
無料の徒歩か。
無論、徒歩の人の方が多い。
至って貧相な国だ。
しばらく歩いて行くと、あることに気付いた。
否。気付かさるおえない状態なのだ。
2㌔ほど離れると、まるで違う国のようになってしまっていた。
船に乗ったわけでもない。
ましてや、空も飛んでいないのだ。
…そう。
この国自体が変わっていたのだった。
2㌔歩けば昔にさかのぼり
戻れば今になる。
つまり、僕が今足元にある地面はコンクリートで
軒も、木造ではなく、鉄筋で出来ている。
鉄筋というのは不思議だが、列車も走ればバスも通る。
でも、それは僕が今立っている向こうしか、実在しない。
振り返れば、線路もない、ただ静かな町があるだけだ。
恐ろしいことに、彼女はこれを知っていた。
確かだといえるのは、この目に見える全てが、僕の幻想ではないということ。
夢見ではないのだ。
僕は息を呑み、人々が込み合う街に入り込んだ。
入った瞬間襲いかかる異臭。
騒音。
そのどれもが、僕にとって、ただの苦痛。
ふと、彼女の容貌を思い浮かべた。
彼女のような人がこの街に出入りしているとは……
到底、信じがたい。
通りすがる度に見下ろされる。
何でだろう…。
僕が小さいからかな。
僕は鏡で自分を見たりはしないから、自分という存在が分からない。
どんな顔で
どんな表情で彼らを見ているのかも…。
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