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白い…。
『無』は白いという大人を僕は否定していた。
『無』なら色彩などないはず。
それは、何ものでも無いのだから…。
この考えが正しいということは
今
この場所で証明された。
ただ、僕は自分の夢の中にいるだけだが、少なくとも『僕』は僕の意思に沿っているようだ。
足を一歩踏み出す。
素足にひんやりとした感触が伝わる。
透明なガラスでもあるのだろうか。
そんな空想が、まだ僕の中にあった何て。
笑えてきた。
周りから見たら、とてつもない嫌悪感を抱かれたであろう。が、そんなはずもなく、ただ『無』が存在しているだけだ。
一歩、一歩、足が触れる瞬間を噛み締め、僕は歩く。
硬く
それでいて、もろい。
まるで、『人間』のように……。
…母のように…。
あることを思い出した。
昔、僕がまだ小学校に入りたて、ランドセルを背負い、まだピカピカの真っ白な靴で通っていた頃。
ある日、確か僕は、母にこう尋ねた。
『お母さん、僕の名前ってどういう意味なの?』
って。
別にこういうのが聞きたい訳でもなかった。ただ、周りの人間が、僕の母が
こういうことをされないと
話しかけないと
僕を何か別の生き物を見るような目で見るから。
されたって何とも思わなかったけど、特別、僕は親切なようで。
『あの生き物』たちを喜ばせることが、優しさなんだって分かっていたから。
自動的に動く笑顔と、甘えたような口調で母に聞いたのだ。
勿論、僕の気遣い。
小学校1年の僕に気を遣わせる『人間』って、本当に馬鹿なんだ。
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