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母は
僕を見つめ
壁を見つめ
天井を見つめ
そして目をつむり
こう囁いた。
『お父さんがつけたの…』
って。
母は震えるような声で、僕に伝えたんだ。
まるで、他人がつけた名前なんて、私が知るわけないじゃない。って言うみたいに…。
僕はそれ意外、何も喋らなかったし、それに
何も聞くことがなかったから。
その時は、よく分からなかったけど、はっきりと今では分かる。
母は、僕がこの世に生まれ落ちてきたことすら、興味がなかったって…。
別に悲しいなんて思わない。
だって…僕も母を、一度も愛したことがないから。
何もない無の世界で、鑑賞しているのは、僕意外、誰もいない。
たぶん、それは僕自身が望んでいないからだ。
夢ってものは、ことごとく忠実で、人間の相棒である犬ですら、比べものにならない。
そこまで忠誠心が強いのなら、こんな『無』ではなく、空にしてくれたらいいのに…。
せめて、あの青を見せて欲しい。
それほどまでに、現実で、息をするのが苦しかった。
地上で生きるのが、どれだけ苦しいのか…、まだ、誰も理解していない。
あんなに空に行きたがっていることすら、自分で分かっていないのだから…。
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