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――女に、なってる……?
慌てて洗面所に駆け込んだ。
理由は今の自分を見るため。
女が誰一人としていない我が家は鏡というものが非常に少ない。
こうして体を見るための鏡なぞ、洗面所ぐらいにしかないのだ。
そして、心なしか言うことを聞かない足で洗面所に辿りついた俺を待っていたのは、非常識な光景だった。
鏡の中。
それは当然鏡に映すものが現れるもので、こうして鏡の中に美少女といってもいいような女が現れるということは、俺がその女なのだろう。
見た目の年齢は俺とあまり変わらず十六歳前後。
それなのにメリハリのついた体で、シャツの前ボタンは全て外され胸が丸出し。
黒髪のストレートが印象的で、まるでその髪に合わせて作られたかのような少し暗い感じのする女の子が、鏡の中に一人で存在していた。
「なん、で……?」
発する俺の声は高く、陳腐な言い方で鈴のよう。
その声は男とは思えるはずのない声で、女ととるには十分すぎるほど高い女の声。
喉に触れるとあるはずの喉仏が失せており、これが原因なのだろうかと、回らぬ頭で考えた。
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