第一章 復興の音色

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「宰相様、やはり葵瞻くらいはつけて歩いてくださいな。」 「え~。だって葵瞻が一緒だといろいろダメって言われちゃうし…。」 それはまぁ、こんな無鉄砲な娘の護衛ともなれば、葵瞻でなくとも口煩くなるだろう。 「御身の安全を第一に考えてくださいませ。城下町ならまだしも、こんな国境普及にまで…。」 「そう、輸入物の確認をしてるって聞いたから様子を見に来たの!」 いつものことながら、李嬰の話を聞くつもりはないらしい。 既に興味を輸入物の確認へと移してしまった林麗は、李嬰の周りの資料に目を通し始めている。 「それは秦国からの輸入物の一覧表ですよ。これが品名で、こちらが重量になっています。」 こうなれば、尋ねられる前に説明するべきだと李嬰は知っている。 最初こそこの宰相のやり方には驚いたものだが、もう付き合いも三年になるのだ。 「重量は毎度確認しているの?」 「ええもちろん。不正があっては困りますからね。今日の確認は、今終えたところです。」 これらは一度国に集められ、少し値を足して市を営む人々に売り、利益は運搬や計量に働く人たちの賃金になるのだと李嬰は説明した。 「賃金は足りるの?」 「充分ではありませんが、それ以上値を上げれば景気にも響きます。市ではこの価格にさらに値を上げて売ることになるんですからね。」 そっか…と林麗はしばし考え込む。 「仮にね、一度の輸入量をもっと増やして、運搬の回数を減らしたらどうなる?一度の仕事量は少し増えるだろうけど、賃金は上がらないかな?」 「確かにそれは名案ですが…しかし事実問題、それでは市に売れません。今で充分なのですからこれ以上は…。」
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