105人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
「余りは国が買います。」
林麗の言葉に李嬰はもちろん、その場で働いていた人たちは驚いて彼女を見つめた。
「宮廷には人がたくさんいるし、食材は必要です。物によっては国庫に保存もできる。市から買うよりこっちで買った方が安いですし!」
宮廷からのお金は、額を変えなければいい。
ここでの値で取引ができれば市の額より安く済み、そうして浮いたお金が働く人たちの賃金にできる。
林麗の示した意見にその場はしばし沈黙し、そして弾けたように歓声が飛んだ。
「ありがとうございます宰相様!!」
「そのようにしていただくと助かります!」
「宰相様!!」
固まっていた李嬰も、ふぅと感嘆のため息をついた。
「驚いたね。そんな秘策が出てくるとは。」
「国から出るお金は変わらないから問題ありません。帰ったらそのように兼訟に話してみますね。」
にっこりと微笑む林麗は、こう見れば本当にただの娘だ。
歳は二十一。
若者揃いの新体制といえど、その中でも最年少だ。
李嬰の二分の一さえも生きていないこの娘は、まだまだ幼さが見え隠れするかと思いきや、こういうところで見事な宰相っぷりを発揮するのだから驚きだ。
「ありがとうございます宰相様。こういったところで働く者は、まだ貧しい生活を強いられている者ばかりなんです。彼らに代わって礼をいいます。」
李嬰は林麗に正式な礼をした。
市を持てないものたちは、肉体労働者としてこういったところで低賃金で働くしかないのだ。
賃金が上がるというのは、彼らの命を救うも同然。
「堅苦しいのはなしだっていつも言ってるはずですよ、李嬰。それより、次は市の報告をしてください!」
照れ隠しにしては少し乱暴な発言。
そんな初々しさにも愛おしさを感じながら、李嬰は林麗を市へ連れた。
最初のコメントを投稿しよう!