第一章 復興の音色

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「余りは国が買います。」 林麗の言葉に李嬰はもちろん、その場で働いていた人たちは驚いて彼女を見つめた。 「宮廷には人がたくさんいるし、食材は必要です。物によっては国庫に保存もできる。市から買うよりこっちで買った方が安いですし!」 宮廷からのお金は、額を変えなければいい。 ここでの値で取引ができれば市の額より安く済み、そうして浮いたお金が働く人たちの賃金にできる。 林麗の示した意見にその場はしばし沈黙し、そして弾けたように歓声が飛んだ。 「ありがとうございます宰相様!!」 「そのようにしていただくと助かります!」 「宰相様!!」 固まっていた李嬰も、ふぅと感嘆のため息をついた。 「驚いたね。そんな秘策が出てくるとは。」 「国から出るお金は変わらないから問題ありません。帰ったらそのように兼訟に話してみますね。」 にっこりと微笑む林麗は、こう見れば本当にただの娘だ。 歳は二十一。 若者揃いの新体制といえど、その中でも最年少だ。 李嬰の二分の一さえも生きていないこの娘は、まだまだ幼さが見え隠れするかと思いきや、こういうところで見事な宰相っぷりを発揮するのだから驚きだ。 「ありがとうございます宰相様。こういったところで働く者は、まだ貧しい生活を強いられている者ばかりなんです。彼らに代わって礼をいいます。」 李嬰は林麗に正式な礼をした。 市を持てないものたちは、肉体労働者としてこういったところで低賃金で働くしかないのだ。 賃金が上がるというのは、彼らの命を救うも同然。 「堅苦しいのはなしだっていつも言ってるはずですよ、李嬰。それより、次は市の報告をしてください!」 照れ隠しにしては少し乱暴な発言。 そんな初々しさにも愛おしさを感じながら、李嬰は林麗を市へ連れた。
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