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「もうじき先程の輸入物が、国の管理するあの建物に集められます。」
そう言って李嬰が指さしたのは国営の大市場。
「市の人たちはあそこから輸入物を買って、市に並べるんです。」
故に、国営の大市場から一般の民は物を買うことはできない。
購入は市に並べる目的のためだけに買う人たちのみに許されるのだ。
もちろん、輸入時より多少値が上がった状態。
「本当は、もっと安く売ってあげられたらいいのに…。」
大市場で売られる値は、およそ輸入時の一割増しだ。
一般の民が買う時にはこれにさらに値が上がった状態なのだから、大体二、三割は高くなるのだろう。
「しかし宰相様、この値上げ分が、人々の賃金なのですよ。」
先程の運搬や計量の人たちのように。
そして、大市場で品を選び、それらを市へ並べる店の人たちもそう。
「値が下がっても賃金が安くなるのでは変わりませんよ。最近値上がりしているというわけでもありませんから、充分です。」
林麗がたてた、先程の策。
あれだけでも、本当に感謝しなければならないくらいなのだ。
林麗はさも簡単なことであるかのように言っていたが、新しいことを始めるのには何かと問題が浮かぶだろう。
李嬰の一番の危惧は、国が大市場で食材などを買うことによって、それまで買っていた一般の市への損害が生まれることであった。
これまでことごとくそういった問題を解決してきたこの宰相のこと。
当然その問題については頭の中で把握しているだろうし、もしかするともう打開策があるのかも知れない。
しかしそれが、簡単でないことは李嬰にも容易にわかる。
だからこそ、これ以上の贅沢は望むまい。
「…うん、わかってる。」
呟いた林麗の背を、励ますようにポンと叩くと李嬰は笑みを向けた。
思うところはあるだろうが、安心したように林麗も微笑んだ。
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