第一章 復興の音色

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がっちりと、葵瞻はこれでもかという力で林麗の腕を掴む。 「王宮へ戻りますよ宰相様!皇帝陛下がご起床になっていたらどうするのですか!」 そのまま、ほとんど引きずるように歩き始める。 「ちょ…ちょっと葵瞻!?待って、痛い。自分で歩けるから!」 「なりません!貴女には油断も隙もありはしないんですから!!」 さすがに葵瞻。 林麗の性格は充分に把握しているらしい。 なんとか城下の大通りを抜けて人気のない道に入ると、葵瞻は乱暴に手を離した。 「まったくお前は…自分の立場を自覚してくれっ!宰相に何かあれば、国が傾く!」 周囲の目がなくなれば、いつもの口調に戻る葵瞻。 二人きりの時の会話は常にこんな感じだ。 重臣とその護衛にしてはずいぶんと打ち解けた話し方だが、何を隠そう葵瞻は瞭明の無二の親友なのだ。 二人きりになれば、皇帝といえども瞭明に対してでもこの口調を使う。 「…ごめんなさい。」 ギロリと葵瞻に睨まれ、放された手を擦りながら林麗はうつ向いた。 「…心配をかけたくないから、瞭明が寝ている時間に抜け出したのか?」 まだ怒りを含んでいる声に、林麗はただ小さく頷いた。 「あのなぁ…心配かけたくないなら、俺を連れて行けばいいだろ!?大体、お前と俺は常に行動を共にするって義務だろ!わかってるのか?」 「…わかってる。ごめんなさい。」 本日もう何度目かの謝罪。 「お前の謝罪はいつだって口ばっかりだ。もう二十一だろ?いい加減わきまえろ!」 「…はい。」 消えてしまいそうな林麗の返事に、葵瞻ははぁ、と大きくため息をついた。
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