第二章 改革の行方

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「陛下、そろそろご起床の刻限にございますよ。」 軽く戸を叩いてから、香來は声をかけた。 宰相脱走を聞いてから、香來は瞭明を起こすのを中断していた。 万が一、彼が目覚めてしまい、その上宰相が城を抜け出しているなどと耳にしたら黙ってはいないだろうという、香來ならではの配慮だったのだ。 「陛下、おはようございます。」 声をかけてみても、中から返事はない。 いかに寝起きの苦手な瞭明といえど、もう八時を過ぎたという刻限になってまで深い夢の中ということはほとんどない。 だいたい、もうじき毎朝の日課でもある朝の会議が始まるのだ。 瞭明もそれはわかっているはず。 普段も何度も起こしに来なければ目覚めない瞭明だが、さすがに公務に差し支えが出るまで眠っているほど呑気ではない。 不思議に思った香來は兼訟と顔を見合わせ、首をかしげた。 「陛下、失礼致します。」 香來は戸を開けた。 戸を開けて、びっくりだ。 動きを止めてしまった香來に不思議に思った兼訟も中を覗く。 同じく、覗いてびっくりだ。 目の前には、相変わらずの天盤付きのベット。 しかしそこに敷かれている上質な深紅の布団は乱雑にめくれあがっており、その中に目的の人はいない。 めくれあがっている乱雑加減から、その人物が慌てて飛び起きたという様子が手に取るようにわかる。 「あぁ…もぅ。」 先に動けるようになったのは、さすがというべきか香來だった。 だてに皇帝付きの従女ではない。 彼のやることなどお見通しなのだろう。 それ故の渾身のため息だ。 「…参謀様、どうやら遅かったみたいです。」 がっくりと項垂れて香來は言った。 「今日の会議は、何やら嵐の予感がするね。」 この状態と香來の言葉からだいたいを悟って、兼訟も苦笑を浮かべた。
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