序章 終焉の始動

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卿国に内乱が起こったのは、本当に突然だった。 時の王は十二代皇帝・侶郭(リョカク)。 彼を王位から引きずり下ろしたのは、現在卿国を治める皇帝・瞭明(リョウメイ)だ。 内乱の一報に驚いたのは、おそらく隣国より卿国の民たちであろう。 彼らは内乱が起こる道理にはおおいに賛同しながらも、しかしそれによって生まれるであろう犠牲を思って憤りを示した。 内乱が流す血を思って。 そしてこれから起こるであろう隣国との戦が流す血を思って。 しかし彼らの裏をかくかのように、内乱は瞬く間に終わりを告げた。 楚や秦が兵を出すべく策を労する、その間すら与えることなく。 内乱後の混乱も、あっと言う間に収拾された。 新しい皇帝・瞭明は王宮を大きく改革。 王位の世襲制を改め、緩みきった国政を正し、家臣も厳選した。 また権力が一点に集中しないため、内政を受け持つ宰相・外交を務める参謀・軍を司る将軍の三位を置き、国政に関わる決め事にはその中の過半数の賛成を必要とした。 その後王宮に溜め込まれていた財を使って国を大きく整備し、民の生活を保護した。 内乱によってしばし滞った貿易もすぐに再開し、それによって各国は卿の復興を思い知らされたことになった。 正に、一分の隙もない内乱。 隣国を恐れて改革を起こせなかった民たちにとってみれば、まさに夢のような内乱であった。 それを可能にした現皇帝・瞭明を、人々は畏怖と尊敬を込めて、“開闢の王”と呼んだ。
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