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1枚目の写真を俺に見せながら師匠が言った。
「ああ、これだ、どうした?」
確かにその道祖神とやらには男と女が彫ってあり、男が黒く削り取られていた。
「風が落ちて、入院した時に警察が来たって言うんですよ。妹の美知ちゃんから聞いたんですけど・・・風の奴ウワゴトで病院の人に
「誰かに押された、黒い影しか見えなかった」
って言ったらしいんですね」
「ほう」
「でも家族は誰もいなかったし、玄関の鍵も閉まってて、結局事故って事になったって言うんです」
そうだった。
風が退院して自宅療養になって見舞いに行った時に聞いてみたが、風は黒い影の話を覚えていなかった。
言った記憶すらなかった。
しかし、その話をきっかけに呪いの話になり、元気そうな風の様子を見て安心もしていた俺は(脳波が乱れたり痙攣を起すと言った後遺症はあったらしい)その『地蔵の呪い』の話にオカルト心をくすぐられ、嫌がる風に写真を送ってくれと約束させたのだった。
結局、風は死んでからその約束を守ってくれた事になる。
俺はその道祖神の写真、人型に黒く削られた部分を見つめていた。
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