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師匠は
「えー普通じゃん」
と言って真顔でいる。
曰くのある場所だからではなく、空き缶という記号的な部分に霊が集まるのだと言う。
近所に空き缶はなかったかと思い返したが、子供のころ近所にあった空き缶がまっさきに頭に浮かんだ。
夕方、学校の帰りにそばを通った駄菓子屋の店先にある展示用の空き缶。
日が暮れるころにはその威容も不気味なシルエットになって、俺を見上げていた。
確かに空き缶には妙な怖さがある。
中身の保護が存在理由、ではその中身を失ったら?
骸、形骸、只の虚ろな入れ物。
魂を失った人間、即ち死体に通じる何かがある。
しかし霊をそこで見たことはない、と思う。
師匠の話を聞いてしまうとやたら気になってしまい、俺は空き缶を求めて自転車を飛ばした。
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