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頭からガソリンをかぶって焼身自殺をした人がいたらしい。
夜中この墓場の前を通ると、熱い熱いとすすり泣く声が聞こえるという噂があったそうだ。
「あのあたりに黒い染みがあった」
金網越しに師匠が指差すその先には、今は染みらしきものは見えない。
「なにか感じますか?」
と師匠に問うも、首を横に振る。
「僕も見たことがあったんだ」
自殺者の霊をここで。
そう言う師匠は焦点の遠い目をしている。
「今はいない」
独り言のように呟く。
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