ルナ、尾行される

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沙耶の屋敷が見えてきた頃には、日はどっぷりと完全に沈んでしまっていた。 街灯なんて全く無いこの時代は、たった数メートル先も闇に呑まれてしまう。 普通の人間ならば、右も左も分からない恐ろしさに耐えきれず、無意識に足がすくんでしまうだろう。 だが…ルナは闇に包まれた夜道のど真ん中を、堂々と歩いている。 ルナは眼を黒から紅く変色させることで、夜道を昼間と同じようにはっきりと見渡せる事が出来るのだ。 ―こういう時だけは、この力を持ってて良かったと思うなぁ。 ふと、ルナは呟く。 この力はルナの人生を狂わし、愛する人を何人も不幸にした。 ルナは自分で命を絶つ事を許されない。 自殺が出来ないならば………と思い、若い頃はわざと殺された事があったが、何度殺されても直ぐに生き返ってしまった。 死にたいのに死ねない……… ルナ「全く…俺が楽になれるのは一体、いつなんだろうなぁ」 立ち止まり、静かに夜空を見上げる。 お互いが競い合うかのように眩しく光り輝く星達。 手を伸ばせば吸い込まれてしまいそうな………そんな雄大さを感じた。
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