Ⅱ.闇を支配する雨

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――あれ? まてよ、と綾介ははたと剣を見つめて立ち止まる。この剣、どこかで見たことがある。 思いだしそうで、思いだせない。記憶のすみっこに引っかかっている。 真紅の柄に、金色の蔓のような装飾が施されている。一体こんなもの、どこで売っていたのだろう。 綾介は無意識のうちに剣の柄へ手をのばしていた。  触れてはいけない、という頭の中の警鐘にも耳を傾けず。 指先が少し柄についた瞬間、綾介は公園にはいなかった。 懐かしくも忌々しい思い出の詰まった校舎。そう、小学校にいたのだ。 目の前の短剣は消えていた。なんだ?ここは夢の中?それとも過去の記憶?自分の?他人の? わけがわからなかったが、冷静になって辺りを見わたしてみると、懐かしい顔の上級生などがいた。しかし、綾介の姿は見えないのか、そのまま目も合わずに素通りしていく。
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