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「魔女は森の中で花のように生を繰り返していた。ヒトは始め、魔女の善き隣人であろうとする」
周防はポツリポツリと小雨が降りしきるかのように声を零す。白い世界が彼の瞳を刺激していた。
「ヒトは魔女と共存しようとしていたんだ。けれど、ある金属が造り出されてからは様相が一変する」
「ある金属とはなんですか」
「時間の経過と共に“育つ金属”だよ。オルクスの骨組に使われた」
成長していく骨。
それはオルクスの中枢となる。
「だが、その骨だけでオルクスが造り出されたわけじゃない。魔女の母胎にオルクスの基礎を埋め込み、成長させることでオルクスは生を得た」
魔女の血肉。
それがオルクスの命。
魔女という存在が無ければ、オルクスは存在し得なかった。
「繰り返す生の一部が、オルクスに与えられたということですか」
「そうさ。ヒトは神の領域に足を踏み入れた。魔女の命を犠牲にして」
「魔女は死なないのではないですか」
周防は首を横に振って溜め息を漏らすと、白い空を見上げる。
「魔女はヒトが造り出す化学物質や金属に対する耐性を持たなかった。何度も生きる魔女は、たった一度の拒絶反応により死に絶える。オルクスを孕むことで」
周防の息が白く、染まり上がる。桔梗は何故か、一抹の不安を覚えた。
白はどこまでも冷たく、体温を奪う。
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