simulate‐3 最期の一念は善悪の生を引く

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   もし、オルクスが造り出されなかったのなら──そんな仮定の話など、意味をなさない。  起きてしまったことを、無かったことには出来ないのだから。 『システムエデンヲ、実行致シマスカ』  無かったことにはならないのなら、せめて消し去ってしまおう。  代償に全てを失ってもいい。  狂った世界は、彼らにふさわしくない。  彼らが生きる場所は、植物が生い茂る自然でなければならない。 『認証パスワードヲ確認シマシタ。システムエデン、実行致シマス』  きっとこの不条理な世界は白と化すだろう。  それは世界を正すための、雪。死ぬことのないオルクスを殺すための、雪。  魔女やヒトには害をなさない、文明だけを消し去る雪。  彼の為だけに、それを造り出したのだ。望みが叶うのならば、後世で凶悪な犯罪者とされてもいい。  成し得たいことは、ただ一つ。誰に理解されなくとも、構わない。もとより、理解されようなど思っていないのだから。  ただ悔しいのは、歪みのない世界を見ることが出来ないということだけだ。  共存が何処にある。  永存が何処にある。  併存が何処にある。  死の無い世界など、有り得ない。  物事は終わりまで、エゴであるべきだ。   
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