simulate‐1 最大多数の最大幸福

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   世界は、誰かの願いを打ち消して成り立っている。誰かの野望は、否応無しに誰かの希望を踏みつぶすものだ。  全ての人の願望は同時には叶わない。百か千か、はたまた十か万か。一か零か。 『システムエデン、起動シテイマス』  多くの願いを叶えるために少数の願いを切り捨てるか、否か。逆に少ない願いを叶えるために、多数の願いを切り捨てるか、否か。  そんなメビウスの輪にも似た押し問答を繰り返して、歴史が作られてきた。勝者は自らの野望を誰よりも多く叶えている。  だからこそ勝者として歴史に名を刻み、君臨した。  平穏は何処にも無い。だからヒトは皆、それを求めて彷徨う。争いの無い場所が何処にあるというのか。 『システムエデン、インストール完了。プログラムノシミュレートヲ実行致シマス』  誰もが皆、忘れてはならない。自分と他人を隔てる絶対的な壁は壊すことが出来ない、と。  そして、真実の理解は誰にも出来ない。ヒトによって事象の理解はそれぞれ異なるからだ。  安全が何処にある。  安心が何処にある。  安定が何処にある。  死の無い世界など、有り得ない。  物事の始まりは全て、エゴである。   
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