プロローグ

1/2
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ

プロローグ

真っ暗な部屋に一人、ヒトがいた。 真っ暗というよりは、ブラインドを降ろしてわざと暗くしているのである。 その暗さのせいで、そのヒトの姿は良く見えない。 「前回からもう六年もたったのか……。 時間が立つのは早いものだ……」 机の前に設置してある椅子に座り込み、目の前においてある封筒に目をやる。 とりわけ、何のおかしな点すらも見られない、便箋用の茶封筒。 それは、13枚あった。 蓋はしっかりと糊付けされており、誰かが作意を持って望まない限りは決して開く事はない。 何故か不思議な事に、宛名は書いてあるのに宛先は書かれていなかった。 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 「――――様」 宛名の数は、茶封筒と同じくきっちり十三人分。 一つだけ例外はあったが……。 しかし、不思議だったのは宛名が書かれていない事だけではない。 ――――の名前が、書かれていないのである。 このヒトのミスか――或いは――……。 「さて、今回はどうなるか。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!