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その日はいつもより少し暑い気がした。
そんなことを思いながら希美は窓の外を見ていた。
そのときコンコンとドアがたたかれた。
「どうぞ」
「おはよう希美ちゃん、調子はどうだい?」
担当の井上医師、若くてナースからは人気らしいが希美はこの人が苦手だった。
「別に..普通です。」
「そうか。」
今日は何か違っていた。いつもみたいなハイテンションにしゃべりかけてこない。
「何かあったんですか?」
思わず希美は聞いてしまった。
医師が重い口を開いた。
「実は昨日の検査の結果が出てな...」
「やっぱり見えなくなるんですね?」
「ぁあ」
「後どのくらいで?」
「1ヶ月後には確実に見えなくなる。」
改めて「見えなくなる」と言われ涙が溢れてくる。
しばらく沈黙が流れる
希美が「少し1人にしてください。」と言うと黙ったまま井上医師は部屋を出た。
医師が部屋を出たのを確認すると希美は部屋を飛び出した。
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