一路南国へ

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機内に乗り込みシートに腰掛け、早々にイヤホンを耳に当て目を閉じる。 俺は飛行機に乗るといつも【こう】だ。 アンチなんて言って、科学的に超常現象を否定する原稿を書いているが、飛行機が飛ぶなんて理解出来ない。 さっき空港からみた機体は、なにしろデカかった。デカい鉄とかなんか色々の塊。いったい総重量は何百tあるんだ? 飛ぶ訳がない。これこそ身近な超常現象だ。 「小尾、私と出張嫌なのか?すぐにイヤホンして、嫌味だろ?」 隣りの女性が話掛けてくる。 「俺に話掛けないでくれ。機内では、離陸までは……」 「え?マジで?小尾、飛行機苦手なの?」 俺は無言のまま、右手の人差し指を口に当てた。 横目で隣りを確認すると、編集長は笑いながらイヤホンを取り出している。 「飛行機は最も安全な乗り物だよ?大丈夫、もし落ちたら即死だから」 あぁ神様、早く南国へ連れて行って下さい。
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